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〈20〉硯美艸堂雑記(けんびそうどうざっき) 19

 石の上にも三年と申しますが、私は石硯の下に60年近くも過ごしてきました。その甲斐があって、中國硯の本質が見えてきましたが、同時に今迄の硯説の間違いも明らかになってまいりました。
 間違いの中でも顕著な例は、廣東の緑端硯をとう河緑石硯に決めつけた硯説です。
 昨年の夏に都内の有名展示会場で、この間違ったとう河緑石硯が出陳されたことから、とう河硯説の誤りをただすべく本誌でも繰り返しお伝え致しました。
 同年に國立岩手大学で文房至宝についての講義を致しました。その折、東京では未だに間違ったとう河硯が展示されていることに強く抗議する感想文が提出され、今ではとう河硯の誤りは大学生にも理解されていることを知らされました。
 然るに、この春には再び東京の有名展示会場ではとう河緑石蘭亭硯が出陳されています。
 昨年の夏には有名展示会場の学芸員氏に、とう河蘭亭硯についての誤りを電話でお伝え致しましたが、一向に改善される気配がありません。
 そもそもとう河硯説の誤りは、大正時代(中華民國)に刊行された「廣倉研録」以来のことです。爾来遠方の甘粛省産出のとう河硯を超越する名硯に位置付け、中國硯第一の高値で取引され、価格の高い物がとう河硯と云う極めて短絡的な視点で、とう河蘭亭硯が捏造されたのです。
 廣東省で製作された緑端の蘭亭硯は申し上げるまでもなく、第一級の名硯です。しかし、これをとう河硯に評価すれば、とう河硯の贋物となってしまいます。
 昨年に続いて今春も又、有名展示会場の贋物とう河硯の出陳は、多くの見学者を愚弄し、引いては天下に誤謬を蔓延せしめる行為であって、そこには中國硯の眞の値打ちを追求する姿勢の片鱗さえうかがえません。
 昭和の後期には、廣東産出の緑端硯と甘粛省の本物のとう河硯が大量に輸入されて、何れが緑端硯でとう河硯であることは、既に多くの書道家、ご愛硯家の方方にご理解されている状況です。
 贋物とう河硯の主張は背信を通りこし、自己否定に等しく、又、有名会場の優勝劣敗に従わされては文化の衰退につながります。
 中國硯は東洋文化の精髄であり、硯の研究は実証をよりどころとして、科学としても追究されなければならないと思います。
 圖版1、緑端・蓬来硯(清代)「文房至寶」に収録は廣東省ペーリン(北嶺)産出の緑端硯です。鋒鋩が強く明るい黄緑色は春緑の色にも似ています。春風長に吹き理想的な心の境地を示す緑端の蓬来硯です。

 
緑端・蓬来硯
圖版1、緑端・蓬来硯(清代) 「文房至寶に収録」
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