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〈18〉硯美艸堂雑記(けんびそうどうざっき) 17

 圖版1は、乾隆欽定西清硯譜のとう河緑石硯です。旧文献上で見ることの出来る唯一のとう河緑石硯です。
 西清硯譜は写真や硯拓とは異なり、一面一面を毛筆を使って墨で描かれています。従って、色彩は勿論のこと石質を詳しく捉えることは難しいかもしれません。
 私は白色と思われる石層を示す、西清硯譜のこの硯をとう河硯の基準に定め、三十数年前にとう河を訪ね捜し当てたのが圖版2のとう河原石です。
 とう河硯のふるさとは、甘粛省の省都蘭州市から黄河に沿うようにして車で二時間ほど溯り劉家峡ダムに至り、船に乗り換え更に黄河を溯ると間も無くしてとう河に合流します。近くには有名な炳霊寺石窟があります。
 青緑色のとう河石は現地にはふんだんにあり、白色の石層を持つ原石は西清硯譜のものと酷似していることが分かりました。
 しかし、とう河原石を目の当たりにして、それまでにとう河硯と評価された蘭亭硯等とは全く異質であることを、その時確信を得たのです。
 圖版3は現代のとう河緑石蘭亭硯です。平成に入って間もない頃、上海市工芸品公司に依頼して製作された、これは本物のとう河緑石蘭亭硯です。
 とう河原石の購入に当たった上海工芸公司のP氏に、山刀を帯びた現地の小数民族の方が、この商談が成立しなければ「叩き斬る」と言い放ったそうです。P氏は元は解放軍の漢民族の軍人です。民族は違っても軍人同志の商談は存外うまくまとまり、大量のとう河原石が上海に運ばれ、硯工場で緑端の蘭亭硯に倣って製作されたのです。
 本硯は可成りの数量の中の一面、淡い青緑色はとう河硯の特徴です。このとう河蘭亭硯が製作されたのは、この時が初めての試みであり、それ以前のとう河緑石蘭亭硯は存在しないと思います。
 圖版4は廣東ペーリン山脈の緑端の原石です。この緑端こそが蘭亭硯の素材であり、とう河緑石ではありません。
 山の若葉に光がさしたかのような黄緑色が特徴です。鋒鋩の強さは端硯中の第一等。色彩には緑色、黄緑色、殆ど黄色の種類があります。産出地も廣東の中に複数箇所ありその為に石質も微妙に異なります。
 近時は沙浦の山中で大量の緑端が採掘されましたが、ペーリンの緑端が特に勝れていると思います。
 緑端の蘭亭硯等は、廣東の風土に根を下した伝統的な文化遺産であり端硯を代表する名硯です。
 とう河緑石硯の間違いについては度々申し上げてまいりましたが、又、近時旧とう河蘭亭硯の登場です。
 宇宙の大に比べれば、太陽も一点の燐火に過ぎないことからすれば、緑端もとう河も些細なことかもしれません。
 しかし、これは東洋の文人文化の中核を占める問題です。あだや疎かには出来ません。良心の麻痺があってはならないと思います。

 
圖版1 圖版2

圖版3

圖版4

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