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〈16〉硯美艸堂雑記(けんびそうどうざっき) 15

 今迄にもお話してまいりましたが、中國硯説の様様な誤謬が長く曝されてきました。そのことが中國硯を難解な物にした原因にもなってきたのです。
 たとえ間違った仮説であっても、ひと度定着すると、その説を根底から覆すには百年は掛かると云われています。
 既にご案内致しましたが、間違ったとう河緑石硯説については、本誌あるいは「硯臺」を通して、ご理解を頂けたと思っておりましたが、最近又再びとう河緑石蘭亭硯説が復活してきました。
 この度はとう河緑石硯説の間違いについて改めてご説明申し上げます。圖版一、緑端・蘭亭硯は広東の緑色の端石緑端で製作された、現代硯です。圖版二、は甘粛省のとう河原石で製作された蝉様硯です。
 緑端は黄緑色、とう河石は青緑色であり両硯の違いは一目瞭然。専門家でなくてもご理解頂けると思います。
 とう河緑石硯説の間違いとは、緑端硯を無理遣とう河緑石硯に決めつけたことに因ります。硯の鑑定家、専門家という人達がとう河緑石硯であれば超越する名硯であり、法外な価格に釣り上げ人為的に、とう河緑石蘭亭硯説が捏造され今日に尾を引いているのです。
 緑端もとう河石も、それぞれの原産地を訪ね、客観的な証拠となる原石を採取して、何れが緑端かとう河石かは判明しています。
 緑端硯ととう河硯を比較すると、実用面で緑端が勝れ、色彩も生気のある黄緑色が内側から発光する緑端により一層の魅力が感じられます。
 実質的に勝れた緑端をとう河硯に評価したことに大きな矛盾があります。
 古硯の本質を理解されない方々が、価格の高い物をよしとする考え方の下に、闇雲に大枚を投じることによってとう河緑石蘭亭説が成立したのです。
 緑端硯は勿論勝れた硯ですが、これをとう河硯と評価されれば、とう河硯の贋物になってしまいます。
 我が國には武士の魂として日本刀があり、中國では文人の魂が硯です。所有する書道家の魂が贋物であったなら、その人格も折角の業績までもが贋物に見えてきます。
 仮に一面や二面の贋物を掴まされたとしても、驚くことはありません。しかし、間違いにお気付きになり速やかな訂正が必要です。
 緑端硯をとう河緑石蘭亭硯に評価した誤りは、只単に石の問題だけではなく古硯を通して中國の文化歴史に係わる問題なのです。
 とう河硯説の誤謬の訂正を申し上げて四半世紀が過ぎましたが、もう暫く時間が掛かりそうです。

つづく

 
16_1 16_2
圖版一、緑端・蘭亭硯 圖版二、とう河緑石・蝉様硯

 

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