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〈15〉硯美艸堂雑記(けんびそうどうざっき) 14

北方名石・梅花馥郁硯(ほっぽうめいせき・ばいかふくいくけん)は紀貫之の古今集の序文「花に鳴くうぐいす」の中世の美学、雅の世界を示しているかのようです。
 北方名石硯は現在の中國東北地方、かつての満州で造られた硯です。層状を持つ石文に優しい石理は同じ地域の吉林省の松花江緑石硯にも似ています。
 かつて満州方面から引き上げ帰國された方々の多くが北方名石硯を持ち帰っていることからも、当地では相当の数量が製作されていたことが窺えます。
 梅の花は中國から渡来したもので、古事記に梅無しと云われて、もともとは異國の花のようです。梅の花を詠んだ漢詩は数多くありますが、元末明初の第一の詩人高啓(こうけい)の「雪は山中に満ちて高士臥し(こうしふし)、月は林下を明くして美人来る」が知られています。
 高士と美人が梅の擬人的表現、雪が深く積もっている山中に、高潔な人が世俗を離れてひそかに住みなしている。月光が明るく照らしている木立から美人がどこからともなく訪れてくると云う。梅花と雪、梅花と月光の美しいとり合せです。
 美人はかならずしも美人とは限らず、賢者、君子をも意味しています。
 梅花馥郁硯は梅の香が盛ん。春の兆を示しています。
 鶯の霞にむせぶ明けぼのの声に眠を覚ます根岸の里の侘住まい(わびずまい)も、長い日夕を重ねてきましたが、近頃の月日の過ぎる早さには驚かされています。
 今年も既師走、あした待たるる寶船は極月の十四日。東叡山寛永寺除夜(とうえいざんかんえいじじょや)の鐘声凡(しょうせいぼん)と響けば、平成も已に二十四年の辰の年。
 騰龍蒼空(とうりゅうそうくう)を舞えば、雨露(うろ)を生じ我が列島をうるほす。ぱっと明るい年の気配あり。
 硯(けん)なくて何のおのれが櫻かな。どうぞよいお年をお迎えください。

 
北方名石・梅花馥郁硯

 

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