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〈4〉硯美艸堂雑記(けんびそうどうざっき) 3

 端硯には、斧柯山一帯の端溪硯と、ペーリン(北嶺)山脈、龍門山等で採掘される端石硯の二種類があります。
 斧柯山とペーリン山脈とは二十キロ以上も離れている為、当然地層が異なり石質に違いがあります。
 又、形までもが端溪硯と端石硯と異なることから、端溪硯と端石硯の違いをご理解頂くことが、端硯を詳しく知る為には極めて重要です。
 圖版@「端溪水巌・秋爽硯」は、水厳(旧老坑)の洞口から百五十メートルの硯脈(石層)から採取された水巌硯です。純白の雲(魚脳凍)にかいま見る青空(天青色)には爽やかな秋の気配が感じられます。
 硯の全体に透明感があり、白い線(冰文)と鮮明な青花は水巌硯の典型を示しています。このような水巌硯について、昔は大西洞あるいは水帰洞等と評価していましたが、本硯は旧時代に採掘されていた最終地点から、三十メートルも離れていて、勿論大西洞でも水帰洞でもありません。
 又、水巌(旧老坑)の内部は旧文献によると、大西洞、小西洞、東洞、水帰洞等々の多数の洞窟に別れていることが記されていますが、現実には存在せず、水巌の坑内は下方向に進む硯脈から採掘される、同一種の硯石であることも分かってきました。
 従って、大西洞とか水帰洞等の評価は机上の空論であり現実のものではありません。@秋爽硯はそれを証明しています。
 圖版A宋坑端石・三光硯は、ペーリンの硯坑、宋坑の端石硯です。濃い赤紫色に銀色に輝く鋒鋩を肉眼で捉える事が出来て、いかにも墨が摺れそうです。落ち着きのある色彩の翡翠斑(翡翠眼)も端石硯の特徴です。
 三光は宇宙の三つの光、日月星です。
 さて、@端溪硯とA端石硯のこの二面は、大東文化大学での授業で教材として取り上げ、端溪硯と端石硯との違いについて、学生の一人ひとりの席にまで運び、手に触れる等して十分に観察してもらいました。
 端溪硯と端石硯の違いを理解してもらう為で、いずれを高下とするかを質したのではありませんが、学生はこちらの方が良いと指差したのは@端溪硯ではなくA端石硯でした。
 この日受講していた全員がA端石硯を良しと評価したのです。これには大袈裟ではなく驚天動地の衝撃を受けた思いが致しました。端石硯の方がより重厚と答えた数名の学生の発言が特に印象的でした。
 一般的には水巌硯だけを良しと周囲から教えられた方は多いと思います。一時期新老坑硯を販売する目的で、新老坑硯のみが優秀で他は劣るとする極めて乱暴な誤説が雑誌等に登場して、影響を受けた人が少なくありません。
 ところが、闇雲に水巌硯のみを優先する先入観、悪しき宣伝に洗脳されていない純真な学生は、自身の美意識で只きれいだけではない、端石硯の内側に秘めた真の美を汲み取っての発言です。
 中國語で「美しい」を表す言葉に、メイリイ(美麗)とピョウリャン(漂亮)がありますが、学生はピョウリャンの方を選んだものと思われます。
 中國硯は、大陸各地から選ばれた厖大な量の硯石の種類と造形、そして長い歴史を背景とした東洋の精神美、あるいは硯に刻した銘文等々があり、東洋文化の貴重な学問として大学等で講義を致しておりますが、東洋の美を真剣に捉えようとする学生に明るさが感じられました。
 尚、@とAは製作年代も異なります。@は現代硯、Aは清代硯です。現代硯には残念なことに刻線(線質)が無しに等しく、旧硯の存在感と現代硯とは異次元のものであり、この違いを学生が見て取ったとすれば、その審美眼の高さにも驚かされます。
 硯の研究は長い年月を掛けることによって発展するのは当然の事ですが、審美眼は人には初めから備わっていることを、学生から改めて教えられた次第です。
 端溪硯と端石硯との違いは、中國硯をご理解頂く要諦であることを、特に主張申し上げたいと思います。

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圖@ 圖A  
 
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